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なんで?
なんでゼロスが、血だらけで倒れてて。
なんで俺の手も、剣も、血だらけなんだ。
―もしかして、俺が…?
「…っ!!!」
涙が、後から後から、溢れ出て、止まらない。
Selfishness―Lloyd
side
あいつはいっつも、べらべらと何かしら喋っていた。
あいつはいっつも、へらへらとだらしなく笑っていた。
けれど。
あいつは時々、何かを諦めたような顔をする。
とても美しい、けれどゾッとするような―
今まさにその美しくも怖ろしい顔を、あいつはしている。
―おそらく、俺のせいで。
「ゼロス…ゼロスっ!?」
たまらなくなって名前を呼んでみる。
もっと、別の表情をしていてくれればいいのに。
あいつの顔が、少しだけ変わる。
「ゴメンな…俺の…ワガママに巻き込んじまって…」
そうしてまた、少しだけ変わった表情も、元に戻る。
「謝るくらいなら生きろよ!そんな死にそうな顔しないでくれよ…!」
お願いだ。
死なないでくれ。
そんな顔、しないでくれ。
「リフィルさま…もう…いいよ…」
今までゼロスに治癒術をかけてくれていた先生はかなり驚いたような顔をした。
もちろん、俺だって驚いた。
「ゼロス…!そんなことしたらお前は…!」
あぁ、ダメだ。
こいつ、あの表情から全然変わらない。
もしかして、もう。
生きることすら、諦めているのか―?
「もうすぐ死ぬんだ…無駄なことしてんじゃねえよ…
お前のことを…待ってる人が…いるんだろう…?」
あぁ、やっぱり。
どうしてそんなにすぐ諦めちまうんだ?
だって、ここでお前を見捨てていくなんて。
そんなこと、できる訳、無い。
そう言ってやったつもりだけど、どこまで上手く喋れてたのか、良くはわからない。
ただ、このまま終わってしまうなんて、嫌だ。
『お前のせいなのに?』
どこからか、冷たい声が聞こえたような気がする。
…そういわれてみると、確かにそうだ。
俺が、ゼロスをこんな目にあわせてるんだ。
他の誰でもなく、この俺が。
でも、なんで…?
なんで俺、こんなことしたんだ…?
思い出せない。
思い出せないけれど、すごく苦しい。
「笑って―」
あいつが、かすれた声で言う。
あぁ、こいつがこんな事いうんだから、俺、今そうとうヒドイ顔してんだろうなぁ。
大事なあいつの頼みなんだ。
聞いてやろうじゃないか。
一生懸命、口の端を持ち上げてみせる。
ずっと溢れ続けていた涙も、無理矢理抑えこむ。
ごめんな、ゼロス。
これ以上、上手く笑えないや。
あいつの目が、だんだん虚ろになってゆく。
本当に、こいつは死んでしまうのか?
こいつが死んでしまったら、俺は―どうすればいいんだ?
あいつの唇が、何か伝えようと動く。
それは、声にはならなかったけれど。
『ありがとう』
そう言ってくれているようだった。
目を閉じたお前は、本当に、本当に綺麗で。
今まで見てきた中で一番幸せそうな顔をしている。
なんだ、お前、こんな顔もできるんじゃん。
―遅すぎだよ。
生きて、俺の隣にいて、そんな顔をして欲しかった。
すこしだけ、叶わないと分かってはいるけれど、願ってしまう。
さっき抑えこんだ涙が、また溢れ出してきた。
『お前のせいなのに?』
さっきの声が、今度ははっきりと、聞こえてきた。
そうだよな。
こんなことになったのも、俺のせいなんだ。
それならば。
この先には、光なんて無い、暗い世界しか広がっていない。
そう、願おう―
***
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